1日も早い拉致被害者全員の救出にむけて!

北朝鮮人権侵害問題啓発週間作文コンクール2020
高校生部門 最優秀賞
「傍観者」から一歩踏み出せ
愛媛県立今治北高校2年 山口 凜華

「私は、拉致されるために生まれてきたわけではない」
彼女の想いを代筆するならば、私はこの一文に託す。

めぐみちゃん、と優しく呼ぶお母さん。いつも嬉しそうに私の写真を撮ってくれるお父さん。やんちゃだけど可愛い弟達。みんなは、私にとってかけがえのない大切な家族。大好きなみんなに会いたい。会いたい。

昨年十一月、私は、新潟県のめぐみさん拉致現場を訪れた。閑静な住宅街が広がる、至って普通の街並に見えた。しかし付近には、事件の情報提供を訴えるための看板が立てられてあり、異質を放っていた。アニメ「めぐみ」で見た光景と重なり、歩くにつれ胃の辺りがずしんと重く感じた。私が歩いたこの道で、めぐみさんの運命が変わった…。中学校から徒歩で下校中に拉致されためぐみさん。午後六時三十分に二人の友達と学校を出た後、未だ家に戻っていない。変わらない現状、変わらない苦しみ。時は無情に進み、一番恐れていたことが起こった。

―横田めぐみさんの父、横田滋さん永眠―

ニュース速報で飛び込んできた文字は、私を一気に震撼させた。滋さんは、十三歳のめぐみさんの記憶を塗り替えることができないまま旅立ってしまった…。滋さんの涙が私の涙と重なった。

滋さんのように再会できないまま亡くなる拉致被害者家族は珍しくない。私達多くの国民は、この事実に気づかないで、或いは知っていたとしても何も働きかけてこなかった。滋さんの訃報に日本中が涙を流しただろう。しかし一時的な涙は同情の域を脱せず、どこまでいっても他人事だ。四十三年間変わらない世に疑問を持たず、傍観し続けた結果が今である。悪いのは当然拉致をした側だが、それを正すべきは私達国民の責任でもあるのだ。

国の問題として大きく捉えつつも、一個人にできることは沢山ある。国際シンポジウムに参加し、世界中の拉致被害者家族の生の声を聞くこと。こうして作文にして想いを投稿することも、そのひとつだ。些細な事からでもいい、自分にできることを諦めてはいけない。この問題に終止符を打つためには、政府と連携する意思が国民一人一人に必要なのだ。今一度問う。「拉致」という不条理で非人道的な行為を、このまま黙って風化させて良いのか?答えは大きく「NO!」である。北朝鮮に拉致行為を認知、謝罪させ、今後二度とこのような過ちを起こさないと約束させる必要がある。誰もが当たり前に保障された人権を保有し、安心して暮らせる世界を。一刻も早く、全ての拉致被害者を解放しそれぞれが在るべき故郷へ。
「私達は自由を備えて生まれてきたはずだ!」